映画のウェブログ 「け」

23歳無職、自称映画ライター。本当に無職。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』考察 なぜハルクは「失敗」したのか?

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』、しっかり見てきました。MCU、どうなっちゃうんでしょうね?

 

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(C)Marvel Studios 2018



 

ストーリーそのものからの考察、製作スタッフや発表されている次回作などの外側からの展開予測など、さまざまな言語でさまざまな二次ソースが飛び交っています。

 

そのあたりは他所の皆さんにお任せして、ここではハルクのあのシーンについて考えてみたいと思います。

 

待望のMCU作品。どのようなネタバレをも避けたいというそこのあなたは、残念ながらここまでです。また後日お会いしましょう。それでは参ります。

 

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変身できなかったハルク

 

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ハルクが変身に失敗したのは2回。幕が上がり宇宙でサノスと戦って敗北した以降はずっとハルクになれないでいます。具体的に書き起こすと以下の2回。

 

①地球に帰ってきた直後(アイアンマン、ドクター・ストレンジの共闘)

②ワカンダでの戦闘時、ハルクバスターの中で

 

アイアンマンやソーはもちろんのこと、いままで数年間かけて育ててきたキャラクターたちが勢ぞろいするお祭りですよ?

なんでハルクの姿がないんでしょうか?おかしいとは思いませんか?

 

何か必ず意味があるはずです。

 

そもそも「ハルク」が示すものとは?

 

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では、そもそも「ハルク」ってどういう意味があるのでしょうか?細かく分解して考えてみましょう。

彼の特徴は①巨大化することにより得られる ②肉体的な強さです。そして ③そのトリガーは「怒り」

 

つまり緑の巨人が暗に示しているのは男性的な強さ、凶暴性ではないでしょうか?巨大化する、という点に絞れば「ハルク」は男根にも重ねて考えることが出来ます。

 

普段のバナーはナヨナヨして柔和な性格。加えて科学者という極めて博識な属性を持っています。しかしこれらの性質は「ハルク」になったとたんに失われ、真逆の生き物に変質してしまいます。こうした対比からも「ハルク」の男性性は色濃く際立ちます。

 

他のヒーローたちと比較してもソーは元来神聖な存在ですし、アイアンマンの強さはその技術力と経済力なので暴力性は薄いです。キャプテンアメリカは国を代表するキャラクターですし、病弱な肉体を強化して肉弾戦に挑む姿は非常に男性的。しかし彼を象徴するのは「盾」。侵略からの防衛と団結がキーワードになってきます。やはりハルクが最も「男性的な強さ」に近いキャラクターと言えますね。

 

 

IWでのハルクの不発

 

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アイアンマンとの共闘の中でハルクになれずに落ち込むバナー。

またはハルクバスターの中で "come on !" と悔しがりながら俯くバナー。

 

今回の作品で、これら描写を丁寧に見ていくと上であげた「ハルク=男性性」という論の説得力は強固なものになります。

宇宙でサノスに打ちのめされたことに由来するトラウマなのでしょうか。だとすれば精神的な要因が足かせになっているという点でもこの描写は男性性の不能に重なります。EDを強く想起させます。

 

先にも書いた通り、「アベンジャーズ」というスーパーヒーローのお祭りで変身しないのはおかしな話です。つまりこの映画においての裏テーマは他でもなくこの「ハルクの男性性の不能」にあるのではないでしょうか?去勢されたハルク、その事実が暗に示すメッセージとは何なのでしょう?

 

この記事ではここから考えられるメッセージを3つご用意しました。

 

 

 

メッセージ① 作品全体に通じる暴力の天井?

 

あのラストでも明らかな通り、アヴェンジャーズはシリーズ史上最悪の敗北を喫してしまいます。武力による結束の失敗です。どれだけ軍事力を高めても、それを上回るパワーを前には無力。つまり暴力による問題解決の限界が明らかにされているのではないでしょうか?

 

暴力は万能ではない。そのメッセージを具体的に投影する人物こそがアヴェンジャーズ最強の超人、バナーだったのではないでしょうか?

 

 

メッセージ② 国際社会におけるアメリカの失権?

 

ハルクが地球を去ってから、アベンジャーズの国際色豊かになっていきます。エイジオブウルトロンの公開は2015年。あれから3年も経ちました。その間のギャップを埋められずに苦しむハルクの姿として見ることもできそうです。

 

ヒーローはアメリカ人ばかりですが、『スパイダーマン ホームカミング』ではアジア系の面々が目立ちましたし、『ブラックパンサー』で黒人が活躍したのは言うまでもないですね。英国人のベネディクト・カンバーバッチの役柄こそNYの外科医という設定でしたが、ドクターストレンジの世界観ではチベットや中国系のキャラも多いですよね。(ここでもホワイトウォシュ問題で議論がありましたが) MCUに限らず近年の映画界はこうしたムーブメントが顕著ですよね。

 

こうした国際的な場所においてアメリカが無暗に本腰で武力行使に踏み切ることが出来ないことを示しているのではないでしょうか?

 

なお、バナーは身体面のみならず、頭脳的にもトップから脱落します。宇宙の技術とワカンダの科学を目の当たりにし、肩身を狭める以外にすることがありません。

 

 

メッセージ③ 機会の平等のための去勢?

 

それぞれのスーパーヒーローの多くはガジェットで戦っています。先天的な能力で戦っているのはソー、グルート、ワンダくらいでしょうか?ブラックウィドウもトレーニングされた普通の人ですよね。

 

ハルクの過去を遡れば彼もまた後天的に能力を得ていますが、肉体に染みついた能力です。キャップやピーター・パーカーなども身体的なブースとがかかっていますが、機械ガジェットによる武力の増強なしには戦えないでしょう。そうした意味でハルクの身体能力は破格です。平たく言うとチートキャラ。他のキャラクターは機械という外部装置に頼って戦っています。つまり誰でも戦うことができる。ワカンダの科学技術がそれを大きく助けています。そうした不平等を解消するための不発だったのではなないでしょうか?

 

その結果としてバナーはハルクバスターに搭乗して戦闘しています。しかもその戦場は他でもないアフリカ、ワカンダです。サノスの最後の目的の標的もアトランダムに選定されます。誰しもに平等の機会が分け与えられています。

 

特に、女性ヒーローの姿も目立ちます。ガジェットというチャンスさえあれば、人種や性別を問わず誰しもが平等に戦うことが出来るのです。もはや世界で活躍するのは白人男性だけではない。そうした意味での均衡を保つためにハルクが発動しなかったのかもしれません。

 

  

結論

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。付き合って頂いた手前恐縮ですが、現時点で私の出す結論としては「まだわからない」です。

 

なんだそれ、と不満に思う方もいらっしゃるかと思いますが、不確実なことを断定的に論じ切ってしまうのではなく、そのグラデーションを提示するに留まりたいと思います。

 

この謎を解く糸口はどこにあるのでしょうか。国際政治のさらなる予習か、はたまた気の遠くなるようなアメコミの復習か。恐らくその鍵のひとつとなってくるのが「アベンジャーズ4」。この物語の着地の場所がわかれば、自ずとその軌道は見えてくるはずです。

 

これをきっかけに未来の僕が、またはどこかの誰かが、より精度の高い結論を生みだすことになればと願っています。

 

 

 

マジカルキック