『ジャコメッティ 最後の肖像』 産みの苦しみを知る全ての凡人マスト
21世紀ともなれば全員、とまでは言わなくとも50%くらいの人間は何らかのクリエイティビティに身を捧げ、頭を抱え右往左往しているのではないでしょうか。
そんな僕らに、というか僕に、そして貴方に相応しい映画。『ジャコメッティ 最後の肖像』についてです。本記事はまあ別に見てなくても読める、読んだ後も見れる構成(謂わばオススメ記事)になっています。
「前情報はナシに見たいんだ!」という人はそれでも良いです。なんせ多くの人が見てくれればそれで結構です。今日はそんな回です。
あらすじ
普段は自明のものとして書きませんがジャコメッティは館数も成績もそこまでかと思うので今回まずはザックリあらすじをお伝えします。
フランスで活動した芸術家、アルベルト・ジャコメッティが最後の肖像画に挑んだ様子を描いたドラマ。1964年、パリ。ジャコメッティはアメリカ人青年のジェームズ・ロードに肖像画のモデルを依頼する。ロードはジャコメッティの頼みを喜んで引き受けるが、すぐに終わると思われた肖像画の制作作業は、ジャコメッティの苦悩により、終わりが見えなくなっていた。その中で、ロードはジャコメッティのさまざまな意外な顔を知ることとなる。
以上映画 .comより。文明の最先端コピー&ペーストにてお届けいたしました。
ストレートな部分がストレートに良い(感想)
まずは表のストーリーラインが非常に優れているなと。アーティストとしての苦悩、自己嫌悪と自己愛の狭間に押しつぶされそうになりながら、満足の行かない自分の創造性をなんとかして引き立てる。「俗な」「感想」で大変恥ずかしのですが、「共感」「感情移入」をしてしまいました。
まだ一度しか鑑賞していないし、僕はジャコメッティについてジャの字も知らない。(いや「ジャの字」って何?!)絵画美術にもフランス史にも大して明るくはない。こういうキーワードで掘っていくと何か新たな理解への水脈や新鮮な解釈の金脈が眠っているかもしれないですね。しかし残念なことに僕はまだそこまで読めていません。見えた方は是非とも教えてください。
視点についての妙(すこし批評チック)
感想ばかり無為に書いても仕方ないので映画の作りについても少し。上に書いたような刺さり方する人は少なくないかと思いますが、かといって老若男女に共感を与える内容とも少し違いかなと思います。
しかしこの映画は「刺さらない人は相手にしない」というような切り捨て方をしていません。俺は別にアーティストでも何でもないし、と冷めた姿勢でいる人をも引き込むギミックが込められています。それが小見出しの通り、「視点の妙」です。
映画はジャコメッティ視点ではありません。三人称的にも描かれていますがどちらかといえば彼が懇意にしているライターのジェームズが視点人物。これがこの映画の味方を増やすことの出来る大きな要因です。ここで改めてあらすじを確認しましょう。
ジャコメッティはアメリカ人青年のジェームズ・ロードに肖像画のモデルを依頼する。ロードはジャコメッティの頼みを喜んで引き受けるが、すぐに終わると思われた肖像画の制作作業は、ジャコメッティの苦悩により、終わりが見えなくなっていた。(引用元:同上)
これにより普通は理解しがたいはずのアーティストの苦悩。凡人には到達不能の領域の視点から見える「なかなか作品が完成しないもどかしさ」がうまく表現されていたと思います。
ジェームズの「はやくモデルを終えてNYに帰りたい」という並の人間の思考回路――観客が感情移入しやすい視点――を用意しておくことで<肖像画の完成>という目標を共有できたに至ったのではないかなあと。
とにかく
解像度をゴッソリ落として雑に紹介するなら「しっとり系」とでも言いましょうか。爆発も殺陣も無くても全然平気、問題ない。ジャンクフードに疲れた時はヘルシーな映画を。いうなら差し詰め森のバター。ベタつかないパンチラインに圧倒されてください。

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